北海道胆振東部地震から3月6日で半年を迎えます。
液状化の被害が出た札幌市清田区の里塚地区では、雪が降り積もった冬のあいだも、傾いた家の進行が続いています。
住み慣れた我が家を離れないと前に進めない―。引っ越しを余儀なくされた住民の思いに迫ります。
液状化の被害が出た札幌市清田区の里塚地区では、雪が降り積もった冬のあいだも、傾いた家の進行が続いています。
住み慣れた我が家を離れないと前に進めない―。引っ越しを余儀なくされた住民の思いに迫ります。
マチに鳴り響く解体作業の音「寂しいよね」
液状化で家が傾く被害が出た札幌市清田区里塚地区。倒壊の恐れがある家の解体作業が12月から始まり、住宅街には作業の音が鳴り響きます。
「夕方なんて暗くなるとさ、真っ暗だから寂しいよね」「例年と違って、明かりが消えてる住宅が多くて、やっぱり寂しさというのは当然感じるでしょうね」。里塚の住民は一様に寂しさを口にします。
地面が大きく陥没し、住宅が傾いた里塚地区。一部の住民はマチを去っていきました。
「夕方なんて暗くなるとさ、真っ暗だから寂しいよね」「例年と違って、明かりが消えてる住宅が多くて、やっぱり寂しさというのは当然感じるでしょうね」。里塚の住民は一様に寂しさを口にします。
地面が大きく陥没し、住宅が傾いた里塚地区。一部の住民はマチを去っていきました。
リフォームした“終の棲家“が「大規模半壊」に
里塚地区に22年前に家を購入した、中川塁三さん(60)・抄子さん(58)夫妻。2年前には700万円をかけてリフォームをしました。その家を地震が襲いました。
地震以来、“終の棲家“の被害は、日に日に深刻に。札幌市の判定は当初、一番被害の小さい「一部損壊」でしたが、3週間後に全壊に次ぐ「大規模半壊」となりました。
その理由は、家の傾きが止まらないことでした。
「傾きの方向が変わってきている。最初はトイレの扉がバタンと閉まったが、今は閉まらなくなってる。斜めに傾きが変わっている」というのは、妻の中川抄子さん。
ビー玉を床に置くと、勢いよく転がっていくほどの傾き。普通の生活はできません。さらに雪が積もった地面でも異変は続いていました。
地震以来、“終の棲家“の被害は、日に日に深刻に。札幌市の判定は当初、一番被害の小さい「一部損壊」でしたが、3週間後に全壊に次ぐ「大規模半壊」となりました。
その理由は、家の傾きが止まらないことでした。
「傾きの方向が変わってきている。最初はトイレの扉がバタンと閉まったが、今は閉まらなくなってる。斜めに傾きが変わっている」というのは、妻の中川抄子さん。
ビー玉を床に置くと、勢いよく転がっていくほどの傾き。普通の生活はできません。さらに雪が積もった地面でも異変は続いていました。
夫の塁三さんは、「元々地震あった時は、10センチないくらいだった。どんどん下に土が逃げていっているから、亀裂に見える」と話します。
地震直後に10センチだった亀裂は、2か月で50センチにも広がったのです。次第に、抄子さんの気持ちにも変化が生まれてきました。
「家に次々と穴が空いたり、亀裂が大きくなっているので不安。家に愛着はあるけど、早く普通の生活がしたい」
「この一帯5軒全部出ること決まったんですよ。寂しいのと不安ですよね。人はいなくなるし、夜は暗くなるし…」
地震から2か月経ち、続々と引っ越しを決めていく近隣住民と同様に中川さん夫妻も、みなし仮設住宅への引っ越しを決めました.
地震直後に10センチだった亀裂は、2か月で50センチにも広がったのです。次第に、抄子さんの気持ちにも変化が生まれてきました。
「家に次々と穴が空いたり、亀裂が大きくなっているので不安。家に愛着はあるけど、早く普通の生活がしたい」
「この一帯5軒全部出ること決まったんですよ。寂しいのと不安ですよね。人はいなくなるし、夜は暗くなるし…」
地震から2か月経ち、続々と引っ越しを決めていく近隣住民と同様に中川さん夫妻も、みなし仮設住宅への引っ越しを決めました.
故郷の変わり果てた姿
中川さん夫妻の娘、伊藤夏海さん(32)が、結婚生活を送っている東京から両親の引っ越しを手伝うため戻ってきました。
夏海さんにとって、里塚は幼いころから18年間過ごした大切な場所。故郷の変わり果てた姿を目の当たりにしました。
「自分が小学生の頃に歩いていた道が変わっているのを見ると、こみあげてくるものがありますね。切ないというか、寂しいというか…寂しいが一番大きいですね」
一度離れなければ前に進めない…。中川さん夫妻は現実を受け入れざるを得ませんでした。
夏海さんにとって、里塚は幼いころから18年間過ごした大切な場所。故郷の変わり果てた姿を目の当たりにしました。
「自分が小学生の頃に歩いていた道が変わっているのを見ると、こみあげてくるものがありますね。切ないというか、寂しいというか…寂しいが一番大きいですね」
一度離れなければ前に進めない…。中川さん夫妻は現実を受け入れざるを得ませんでした。
「なんかきっとね。向こうの家に着いてから、現実味があるのかなという気がしている」
迎えた引っ越しの日。妻の抄子さんは、みるみる運び出される荷物を前にこうもらしました。
娘の夏海さんは「辛い顔してたらどんどん辛くなる。笑ってりゃ楽しくなるよ」と励まします。
迎えた引っ越しの日。妻の抄子さんは、みるみる運び出される荷物を前にこうもらしました。
娘の夏海さんは「辛い顔してたらどんどん辛くなる。笑ってりゃ楽しくなるよ」と励まします。
住宅ローンを払いながら「みなし仮設住宅」へ
22年間住んだ里塚を離れる抄子さん。しかし、挨拶回りをすると、このマチに残る住民を前に複雑な思いがこみ上げてきました。
「ずっと長い付き合いになってるので、『頑張ってね、戻ってきてね』と言われるとウルっときちゃいますね。戻ってくるつもりではいるんですけど…」
「ずっと長い付き合いになってるので、『頑張ってね、戻ってきてね』と言われるとウルっときちゃいますね。戻ってくるつもりではいるんですけど…」
中川さん夫妻は、里塚から約5キロ離れた同じ清田区内のみなし仮設住宅に引っ越しました。
里塚の自宅より1部屋少ない3LDK、一軒家サイズの家財道具の一部は入りません。
残り約700万円の住宅ローンを払いながら、ここで2年間生活することになります。
「過ぎてしまえばあっという間だったなと思うんですけどね。あぁ2年間か…ってね」と話す抄子さん。
最も被害が大きかった里塚中央町内会では、333世帯中、すでに約60世帯が他の場所へと移りました。
里塚の自宅より1部屋少ない3LDK、一軒家サイズの家財道具の一部は入りません。
残り約700万円の住宅ローンを払いながら、ここで2年間生活することになります。
「過ぎてしまえばあっという間だったなと思うんですけどね。あぁ2年間か…ってね」と話す抄子さん。
最も被害が大きかった里塚中央町内会では、333世帯中、すでに約60世帯が他の場所へと移りました。
極寒の冬 巡回続ける町内会の苦悩
復興を目指す一方で、里塚地区は、地震発生当初から多くの不審者が訪れ、観光気分で記念撮影するなど、住民たちを悩ませています。
町内会では、地震発生直後から極寒の冬も巡回を行っています。盛田久夫町内会長(74)は、高齢者の多い町内会の苦悩を明かします。
「いかんせん年配者が多いもので、私も歩いてますけど正直きついですね。雪や氷で足元も悪いし、寒さも段々厳しくなってきますし、どこまでできるのか…」
札幌市は、宅地の地下に薬剤を注入して地面を固める工法を中心とした復旧策を住民に示していますが、本格的な工事は春になる見込みで、冬の間は待つしかありません.
町内会では、地震発生直後から極寒の冬も巡回を行っています。盛田久夫町内会長(74)は、高齢者の多い町内会の苦悩を明かします。
「いかんせん年配者が多いもので、私も歩いてますけど正直きついですね。雪や氷で足元も悪いし、寒さも段々厳しくなってきますし、どこまでできるのか…」
札幌市は、宅地の地下に薬剤を注入して地面を固める工法を中心とした復旧策を住民に示していますが、本格的な工事は春になる見込みで、冬の間は待つしかありません.
新しい年。里塚地区に残った住民にはマチの姿をもう一度取り戻したいという思いが芽生えています。
毎日巡回警備を続ける、里塚地区に残った復興委員会の今北秀樹さん(46)は、「清田が好きだから。里塚が好きだから。ここの町内の人が好きだから。この部分が一番大きい」と話します。
同じく、復興委員の田中真弓美さん(53)も、「自分たちもここに住んでいたいなと思うし、今仮住まいされてる方も戻ってきてもらいたい」と力を込めます。
毎日巡回警備を続ける、里塚地区に残った復興委員会の今北秀樹さん(46)は、「清田が好きだから。里塚が好きだから。ここの町内の人が好きだから。この部分が一番大きい」と話します。
同じく、復興委員の田中真弓美さん(53)も、「自分たちもここに住んでいたいなと思うし、今仮住まいされてる方も戻ってきてもらいたい」と力を込めます。
「ひどくなった感じ…」傾き続ける家 不安は尽きない
みなし仮設住宅から中川さん夫妻が一時的に自宅に戻りました。妻の抄子さんは、そこで、さらなる変化に気付きます。
「傾きがひどくなった感じもする…。(ひびは)前からあったのか、こんなになっていてびっくり」と驚きを隠せません。
冬になってもまだ動き続けている様子です。中川さん夫妻の家以外でも、雪の重みの影響なのか、傾きが進んでいると感じる住民もいます。
「またこの家に帰りたい」その思いだけが募ります。
夫 塁三さん:「オリンピックもあるしね、楽しく2年間過ごしたいけど、どうなるかね。なるようにしかならないから、焦っても仕方ないからね。ゆっくり待ちます」
妻 抄子さん:「帰って来たいけどね。やっぱり自分の家が一番だから」
「傾きがひどくなった感じもする…。(ひびは)前からあったのか、こんなになっていてびっくり」と驚きを隠せません。
冬になってもまだ動き続けている様子です。中川さん夫妻の家以外でも、雪の重みの影響なのか、傾きが進んでいると感じる住民もいます。
「またこの家に帰りたい」その思いだけが募ります。
夫 塁三さん:「オリンピックもあるしね、楽しく2年間過ごしたいけど、どうなるかね。なるようにしかならないから、焦っても仕方ないからね。ゆっくり待ちます」
妻 抄子さん:「帰って来たいけどね。やっぱり自分の家が一番だから」
地震から半年を目前にした2月21日夜。北海道で最大震度6弱の地震が起きました。里塚地区に大きな被害は出ませんでしたが、多くの被災者が当時を思い出しました。
春が一歩ずつ近づき、雪解けで地中に水が流れ込む季節が迫ってきました。
札幌市は、雪解け後に地盤改良の工事に着手する予定で、中川さんは住宅の傾きを直して生活を取り戻したいと考えています。
これまでの住宅ローンに加え、少なくとも200万円以上はしそうな工事費がどれほどまで膨らむのか…。大好きな里塚に戻るまで、不安は尽きません。
◇
この記事はUHB北海道文化放送とYahoo!ニュースによる連携企画記事です。北海道胆振東部地震の被害の実情と復興の過程を、地元メディアの目線から伝えます。
春が一歩ずつ近づき、雪解けで地中に水が流れ込む季節が迫ってきました。
札幌市は、雪解け後に地盤改良の工事に着手する予定で、中川さんは住宅の傾きを直して生活を取り戻したいと考えています。
これまでの住宅ローンに加え、少なくとも200万円以上はしそうな工事費がどれほどまで膨らむのか…。大好きな里塚に戻るまで、不安は尽きません。
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この記事はUHB北海道文化放送とYahoo!ニュースによる連携企画記事です。北海道胆振東部地震の被害の実情と復興の過程を、地元メディアの目線から伝えます。
uhb北海道文化放送